日々映画

映画を観て感じたこと

2018-01-01から1年間の記事一覧

「裸のランチ」デヴィッド・クローネンバーグ

20世紀最大のバロウズの名作「裸のランチ」映画版。 ビートジェネレーションど真ん中代表作。 害虫駆除の仕事をしながら小説を書く主人公と、ドラックに蝕まれる妻。彼らは殺虫剤で奇妙な幻覚と、妄想を得るようになっていく…。 にしてもこれを映像化したク…

「UFO 〜オヘアの未確認飛行物体〜」ライアン・エスリンガー

オカルト大好きなのでドストライク。 2006年、アメリカで実際に起こったUFO目撃と、電波障害、それに関する政府の隠蔽疑惑事件を基に、数学を駆使して事件を追う青年を描く。 天才肌の数学者たちの描写、これがとても良い。 主人公の眼、流れる数字。 暗号や…

「彷徨える河」シーロ・ゲーラ

驚くほどの映像美。 時代を超えて、アマゾンの奥地を訪れた2人の白人探検家。彼らの日記を基に、先住民やアマゾンの文明の辿った道を描く。 先住民、宗教的侵略したスペイン人たち。取りおこなわれる物々交換。 印象深いのは、アマゾンという大自然の、音だ…

「チャイルド44」ダニエル・エスピノーサ

とても見ごたえがあった。 ソ連の支配下のロシア。 秘密警察の主人公とその家族は不可解な事件を探る。 世の裏では射殺、逮捕、流刑が当たり前のこの不安定な時代を生き抜く人々とその混乱のなかで起こる悲惨な事件が描かれる。 単なるサスペンス映画では決…

「ポルト」ゲイブ・クリンガー

ジャムシュ製作総指揮作品。 まずポルトの街の美しさに息をのむ。淀んだ夜と色素の薄い晴れ間。 夜色とか2人の左右対象のようで非対称な構図はジャムシュっぽい。 フランスの淡々とした恋愛映画を思い起こす構成。動きのある目線からのカメラワークはギャス…

「聖なる鹿殺し」ヨルゴス・ランティモス

やっと観た!ヨルゴスランティモスの新作。 彼の作品は出るたびに俳優が豪華になっていく。笑 「ダンケルク」で一躍有名になったバリー・ゴーガン、いい不気味さを出している。 物語はコリン・ファレルの演じる医者とその家族、そして彼の手術の失態により父…

「火の山のマリア」ハイロ・ブスタマンテ

舞台はコーヒー農家の国、グアテマラ。 (※メキシコのすぐ下!スペイン語圏) 自然に囲まれ、火山の麓で伝統的な暮らしを続けるマヤ人たち。 生活は貧しい。彼らはマヤ語しか喋れない。 主人公のマリヤは両親とこの地で暮らす。 貧困、結婚や妊娠、人身売買…

「不思議惑星キン・ザ・ザ」ゲオルギー・ダネリヤ

すごく好き。何回でも観たい映画。 オカルト界の代表映画とも、サブカルチャーのど真ん中とも言える一本だろう。 公開当時のソ連では驚異の1570万人を動員し、今でもこの映画のフレーズはロシア国民の間でネタとして扱われるほどの人気らしい。 さらに1986年…

「灼熱」ダリボル・マタニッチ

3つの時代 2つの民族 1つの愛 まだクロアチア紛争の悲劇の記憶が新しい国「クロアチア」からの一本。本当に好きな映画。物語は紛争勃発前夜、戦後、現代の3つの時代を生きた人間たちを描く。それぞれの時代を同じ俳優が演じるというかなり前衛的な描写。…

「GOMORRA(ゴモラ)」ロベルト・ サヴィアーノ

イタリア、ナポリのマフィア「カモッラ」の実態を映画化した本作。原作者が実際に命を狙われるほど"彼らに迫った"映画である。 描かれるのは組織の活動下で生活する人たちの生きざま。あまりに非日常なその世界は、当人たちにとっては紛れもない"日常"である…

「The Beguiled 欲望の目覚め」

「some where」のソフィアコッポラ最新作。 おなじみのエルファニング出演です。 "女性らしい狂気" そんな感じなんだろうな、とハラハラしながら鑑賞したものの、物語は途中で思わぬ方向へ動き出す。そこにあるのは嫉妬と狂気だけではなかった。愛や、恐怖、…

「ブラック・ムーン」ルイ・マル

ルイ・マルの怪奇作品。 開始いきなり「本作は理屈の通じない世界での作品です」と監督本人の脚注が添えられる。 男女間での戦争が繰り広げられている世界。 主人公のリリーは敵の攻撃から車で逃げ、奇妙な場所にたどり着く。 リリーがどこから来たのか、何…

「エコール」ルシール・アザリロヴィック

こちらは日本でも比較的話題作かな? 監督のアザリロヴィックは最近「エヴォリューション」という映画を公開したことで話題に。 舞台はどこかの森の中。裸で棺に入れられ、次々と送られてくる少女たち。 彼女たちはこの森の中で勉強し、バレエを習い、暮らし…

「神々と男たち」グザヴィエ・ボーヴォワ(2011)

1996年にアルジェリアで実際に起きた、イスラム過激派によるフランス人修道士殺害事件が起こるまでを描いた作品。 多くを求めず、アルジェリアの地で静かに生きる修道士たち。 イスラム教の根付いた土地ではあるものの、互いの宗教を尊重しながら地元の人に…

「道中の点検」アレクセイ・ゲルマン(1987)

「神々のたそがれ」のアレクセイゲルマン、初期作品。 ソ連のパルチザン(侵略に抵抗し、自国を守ろうとする非公式軍隊のこと)の物語。ナチスドイツの占領下であった1940年代初期のソ連。あるソ連軍の兵士はドイツ軍に捕らえられ、敵軍に寝返っていた。あると…

「ざくろの色」セルゲイ・パラジャーノフ(1971)

パラジャーノフの映像美の極致といえる一本、デジタルリマスター版を鑑賞。 18世紀アルメニアの詩人、サヤト・ノヴァの生涯をこれまたかなり詩的に描いたもの。 際立つ色彩(後半、特に赤)と映像美、やっぱり構図と色彩が本当に綺麗。 パラジャーノフ童貞の方…

「神聖なる一族24人の娘たち」 アレクセイフェドルチェンコ(2016)

ロシアの一部で、独特の文化を持つマリ・エル共和国。 その地で生まれた美しく、不思議な女性たちの人生の物語。 これ予告編から本当に素晴らしいので、是非覗いて見てほしい。 youtu.be ひとつひとつの物語はかなり短いものの、 そこに描かれているのは色々…

「エヴォリューション」ルシール・アザリロヴィック(2015)

あの「エコール」の監督、ルシール・アザリロヴィックここ近年の一本。 この監督の、曖昧なのに印象的なストーリーと終わり方がとても好き。 今作もすごかった。 とある孤島に閉じ込められた少年たちと、謎の女性たち。 そこで繰り返される謎に包まれた医療…

「PARIS」セドリック・クラピック(2008)

5年ほど前、友人に紹介してもらってから何度も何度も観ている映画。 パリの街に住む人々の、それぞれの生活と、ささやかな愛と、絶望の物語。 綺麗で、だけどそれと同じくらい淀んでいるパリの街。 市場で交わされる会話、窓から眺める町並み。 淡々と進む様…

「母の残像」ヨキアム・トリアー(2015)

ノルウェーからの一本。 監督は「ヨーロッパ」という映画で有名なラース・フォン・トリアーの甥だそう。 長編3作目、初の英語作品らしい。 久しぶりに顔を合わせた家族と、亡くなった母の物語。 綺麗なタッチ、静かに進んでく物語。 それでいてときどき、痛…

「パトリオット・デイ」ピーター・バーグ(2016)

2013年のボストンマラソン爆撃テロ、102時間後の犯人逮捕までを実写化。 捜査側、被害者、犯人それぞれの視点。追い詰められる犯人とその家族。 先走るマスコミと命懸けの捜査。そして被害者の描き方がすごい。 自分や愛する人がテロに巻き込まれるってこう…

「海の沈黙」ジャン=ピエール・メルヴィル(1946)

巨匠ジャン・ピエール「海の沈黙」HDリマスター版!!ああこれぞ名作!!! 監督のピエール最初の長編らしい。 静かなのに力強くて目が離せない。 「なんて綺麗なんだ」 ありふれたこの言葉が愛おしく、そして切なく心に刺さるこのシーンは頭から離れない。 …

「ネイキッド」(1997)

こちらはイギリス映画。 独特の世界観で、ドラック映画を連想させられたが、もっと純粋で、愛とは何かを問いかける映画。 単純な恋愛とかではなく、生活の中で何を大切にして生きるのか考えさせられる。 登場人物たちはみんなどこか不器用で、それでも必死に…

「聖者の谷」ムサ・サシード(2012)

インド、カシミール地方からの一本。広がる山脈に湖。湖上で交わされる静かで貧相な生活。聞こえるのは小さなボートの、水を掻く音。インド映画とは思えないほど静かで神聖。 「父は言った『ここは聖者の谷だ』と僕は感謝した」 このフレーズが印象的。白く…

「神々のたそがれ」アレクセイ・ゲルマン (2013)

原作はストルガツキー兄弟のSF小説。 制作に15年かけたアレクセイ・ゲルマンの遺作。 とにかく物凄いものを見せられたという感じだった。汚い、辛いを圧倒的な映像美で見せられる3時間。 ガスに包まれた惑星、そこら中の泥水、鼻をすする音、権力を蔓延らせ…