「1917〜命をかけた伝言〜」サム・メンデス
素晴らしかった...

話題のワンカット映画を劇場で鑑賞。
第1次世界大戦真っ只中の1917年。
イギリス軍1600人の命がかかった伝言。それを伝える重要な任務は若き二人の兵士に託された。前線を超え、敵地を横切る。時間はない。実話を基にした兵士の1日を描く。

怒涛の全編ワンカット撮影、1秒たりとも目が離せない。
そこらじゅうに漂う死の気配と、かすかな希望。人と人との間で行き交う愛と信頼、生きている実感。
これがワンカットで撮影、というのはもう言葉も出ない...。
主演のジョージ・マッケイの演技は息を呑むほどリアルで、もうこれは演技というべきではない気さえしてくる。

死の恐怖と戦い、音から逃げる。
ときに生きている実感を味わい、死んだ人間のことを考え、故郷を思い出す。ときどき訪れる心落ち着けるほんのすこしの時間と、すぐに戻ってくる激しい戦争の影。

以下個人的呟きですが、時折スクリーンを駆け抜ける、SF映画のような幻想的なカットと静けさを含む引きの構図。
これらは昨年の「ダンケルク」のみならず、タルコフスキーやノルシュテイン、アレクセイゲルマンといったジャンルの映像を思い起こさせた。ワンカットで表現されるこの情景は感情移入を通り越し、芸術作品としても視聴者をスクリーンに引き込む。
は〜〜戦争映画はやっぱり良いですね...
昨年のダンケルク、アンノウンソルジャーにも共通するどこかシュールで美しい戦争映画。(流行りなのだろうか...?)
とにかく素晴らしかったのでIMAXも観に行こうかな...
ぜひ劇場でご覧ください。
「ヴィクトリア」セバスチャン・スキッパー
ドイツから、話題のワンテイク映画。

近日公開の「1917」がワンテイクと話題ですが、ワンテイク映画では個人的には今作がダントツトップ。

現地の言葉も喋れない、家出少女のヴィクトリア。深夜のクラブで声をかけられた青年4人と遊ぶうち、気がつくと大金が関わる事件の首謀のひとりになっていた。

何が素晴らしいって、やっぱりこれをワンカットで撮っているっていうのはもう言葉にできない感動...。
夜が明けていく様、朝焼け。
クラブの鮮やかな照明と、気持ちよく響く音楽。
ヴィクトリアと青年達の間に流れる感情と、興奮。
歓喜と、恐怖、そして興奮をそれぞれが妙にリアルに表現され、街の夜が明けていく。だんだん世界が現実味を増してくる。
ワンテイクならではの走るシーンのカメラの揺れとブレはリアルさを強調させ、パニック状態の人間の間で動く構図には1秒たりとも目が離せない。
思わず、ものすごいものを観てしまった、、、と感じる作品。
「COLD WAR あの歌、2つの心」パヴェウ・パヴリコフスキ
冷戦時下、ポーランドからの一本。

ポーランドの舞踊学校で出会った、歌手志望のズーラとピアニストのヴィクトル。
忍び寄る戦争の影に隠れて愛し合う日々、亡命を余儀なくされたヴィクトルと世界を公演して回るズーラは月日と逢瀬を重ねていく。

早稲田松竹で鑑賞。
現代モノクロはやっぱり良い〜!
音楽と舞踊、表舞台の華やかな情景をモノクロで見つめると、カラーとは違った鮮やかさが感じ取れる。
一見、"普通"に見える日常の中に描かれれ戦争の影にはこちらも思わず息を潜める。これが"冷戦"か...としみじみ感じる作品。

月日と、距離と、冷戦という隠れた激動の時代を駆け抜けたふたり。
終盤のズーラが小さく口にした「なんてこと...」の一言の重み。
素晴らしい恋愛映画。
「幸福なラザロ」アリーチェ・ロルヴァケル
イタリアから、神秘的な雰囲気を纏う1本をご紹介。

時は1900年代、イタリアの小さな農村。働き者の青年ラザロと村の人々は小作制度が廃止されたことを知らずに労働を強いられていた。ある出来事をきっかけに労働搾取が明るみになり彼らは外の世界を知ることとなる。しかしそのときラザロにはある事件が降りかかり...

不思議な映画だ。
広大な自然。その中に描かれる村の閉塞感は、ひとりの人間の無力さを投影しているようだ。
働き者のラザロ。誰かが望めばその通りに動く。感情は表現しない。
彼の心の拠り所は羊小屋の近くにこっそり作られた秘密基地。
「僕は働き者だ」
じゃあなぜ秘密基地にいるのか、と聞かれたラザロは言う。
「あなたが望んだから」

物語の後半はどこかもどかしく、切ない。
ラザロはそのとき何を思ったのか。
彼の目には何が写っていたのだろうか。
その不思議な青年が立ち尽くしたとき、視聴者である私たちの心は間違いなく揺さぶられる。

静かで、切なくて、だけどどこか暖かく、そして神秘的な映画。
「ゼロの未来」テリー・ギリアム
鬼才、と名高いテリー・ギリアム監督作品。
近未来。プログラマーの主人公は電話を待っている。彼の仕事はゼロの定理を解明すること。
家に篭りがちな彼の周りを取り巻く社長の息子や憧れの美女。彼が本当に解明しようとしているのは何なのか?

一応ジャンルはSF映画のようで、レビューも賛否両論の今作。
私の意見。これ、どう考えてもカルト映画だろ笑。途中から普通にドラックムービーかと思ったわ笑。

近未来の描写は素晴らしい。散らばるネオンと、電子広告、最先端の街に垣間見られる古い建物。怪しい雰囲気。貧富の差を広げながら発展した街、という印象の美しい描写。
登場人物たちの感情と表情が希薄な分、彼らの奇行はそれを表現する手法のようだ。
主人公は孤独。
を、認めようとしない。ように見える。
変な映画だが、比較的軸はしっかりとしている。主人公は何かを求めてもがいている。それはゼロの定理ではないようだ。

素晴らしい色彩と凝った描写。
オカルト好きが食いつきそうな異次元空間も垣間見れる。
宇宙の描写も多く、個人的にはかなり好き。
余談ですが一瞬ベン・ウィショー出てます笑。
オカルト、カルト好きにぜひ観てほしい。

「アダムズ・アップル」アナス・トマス・イェンセン
デンマークからの一本。
どこか不思議な北欧ヒューマンドラマ。

ネオナチ思想に染まる仮釈放中の男、アダムは更生の為田舎の教会で生活を強いられることに。
どこかがおかしい教会の聖職者のイヴァン。
更生中だという武装化思想の移民カリドとアル中のグナー。
そして何かがおかしい。可笑しい。
彼らの思想、人生、様々な困難が淡々と、どこか可笑しく描かれる。

普段犯罪映画やら、カルト映画ばかり観ているので、久々にこんなに良い映画を劇場で観た、という素直な感想。笑
登場人物達はみなどこか不思議。
物語の淡々とした進みとともにブラックコメディーも満載。重みのある題材ながら気負いせずに観れる作品。
が、この物語、そんな単純なものでは決してない。
特にイヴァンの生き方と思想には、誰しももどかしいような、引っかかるようなものを感じるに違いない。
彼らは一見、お互いを受け入れているようにも見える。見方を変えると全く受け入れていないようにも見える。
彼らが本当に受け入れるべきなのは自分?
それとも真実?
いや、真実って一体何?
さらに、ここまでブラックコメディ混じりながらも響く生と死。これを描く映画もなかなかない。

宗教観が激しく描かれる訳ではないが、物語のキーポイントになるので聖書の「ヨブ記」について知っておくと観やすい。
ほのぼのとして、クスッと笑えて、考えさせられる。素晴らしい映画。
本当観てよかった。ぜひ。










